富士市の製紙・紙加工58社のホームページを全部見てみた。7割にサイトがあり、その半分は止まっていた

はじめに

富士市は紙のまちです。市内を走れば製紙工場の煙突が見え、交流会に行けば製紙や紙加工に関わる方と必ず名刺を交わします。私はこの富士市でWeb制作とシステム開発をしていて、地元の経営者交流会で聞くWebの悩みを交流会に毎月通って見えてきた、富士市の中小企業のリアルなWeb課題に書きました。ただ、あの記事はあくまで「聞いた話」でした。

実際のところはどうなのか。一度、数字で確かめてみたくなり、2026年9月、富士市に本社を置く製紙・紙加工の58社について、ホームページを1社ずつ調べました。結果を先に言うと、7割の会社にサイトがあり、そのうち1年以内に動いた形跡があるのは半分弱でした。

この記事に社名は出しません。数字は誰かを責めるためのものではなく、紙のまちのWebの現在地を共有するためのものです。後半では、止まったサイトを放っておく事情には合理性があること、それでも今動かす意味は「今の受注」ではなく別のところにあることを書きます。

この記事のまとめ

  • 富士市本社の製紙・紙加工58社のうち、公式サイトが見つかったのは41社(71%)。見つからなかった17社のうち7社はグループ親会社のサイトに情報が集約されていた
  • 表示できた40サイトのうち、トップページに1年以内(2025年以降)の日付があったのは18社。残る22社は日付が2024年以前か、日付そのものがなかった
  • HTTPSで正常に開けたのは41社中35社。スマホで読めるのは40社中33社。1割強が、取引先の端末で警告が出るか、文字が読めない状態にある
  • 止まっている事情には合理性がある。大手の下請けや固定客との長期取引が中心で、サイトが今の受注を左右しない
  • だからこそ、サイトは「今の受注」ではなく「次の事業の資産」として位置づける。紙が斜陽に向かう中で別事業やPRの必要を感じている会社ほど、止まったサイトが足を引っ張る

何を、どう調べたのか?

富士市に本社を置く製紙・紙加工58社を対象に、公式サイトを探し、機械判定と目視で状態を確かめました。

対象のリストは、富士製紙協同組合の組合概要、富士市が公開している家庭紙利用促進協議会の会員名簿、日本製紙連合会の工場所在地一覧、富士市の工場見学可能事業所一覧、地図サービスの業種分類を突き合わせて作りました。本社が市外にある工場や全国規模の大手19社は別枠として外し、本社が富士宮市の会社も除いています。残ったのが58社です。

調べ方は次のとおりです。

  1. 社名でWeb検索をして公式サイトのURLを探す。社名だけの検索では求人サイトや地図サービスの登録ページしか出てこない会社があったので、見つからない会社は検索語を変えてもう一度探した
  2. 見つかったサイトについて、HTTPSで開けるか、スマホ表示の設定(viewportメタ)があるか、コピーライト年、トップページの最新日付、問い合わせ導線、採用ページ、CMS(コンテンツ管理システム)の種類、SNSへのリンクを機械的に取得する
  3. スマホ表示の設定がなかった8社は、実際にスマホの幅で開いて目視で確認する

限界も書いておきます。「サイトが見つからなかった」は2回の検索の上位(合計で20件ほど)に公式サイトがなかったという意味で、存在しないことの証明ではありません。実際、1回目の検索で見つからず2回目で見つかったサイトが6社ありました。ただ、探しても見つからないこと自体が、取引先の目から見た現実の一端でもあります。最新の日付はトップページの表記に基づく代理指標で、サイトの奥で更新されている可能性は否定できません。

分析化学の仕事を7年していた私にとって、測定の限界を先に書くのは習慣のようなものです。数字だけが一人歩きすると、調べた本人がいちばん困ります。

58社のホームページは、どうなっていたのか?

結論から書くと、サイトを持っている会社は7割で、その半分強は、少なくともトップページを見る限り1年以上止まっていました。

FUJI CITY PAPER INDUSTRY, SEPT 2026

富士市の製紙・紙加工58社、ホームページの内訳

58社

富士市に本社を置く製紙・紙加工の会社

41社71%

公式サイトが見つかった

見つからず17社。うち7社はグループ親会社のサイトに集約

18社

トップページに1年以内の日付がある

22社

日付が2024年以前、または日付の表示がない

2024年以前の日付7社、日付の表示なし15社

表示できた40サイト中。1社はトップページが見つからない状態(404)

35/41 HTTPSで正常に開ける

33/40 スマホで読める

22/40 採用ページがある

数字を順に見ていきます。

公式サイトが見つかったのは41社(71%)でした。見つからなかった17社のうち7社は、グループの親会社のサイトに会社情報が載っているケースで、独立したサイトを持たないのは経営上の判断と読めます。残る10社は、2回の検索で公式サイトにたどり着けませんでした。

表示できた40サイトのうち、トップページに2026年の日付があったのは13社、2025年が5社です。2024年以前の日付で止まっていたのが7社、日付の表示そのものがないサイトが15社ありました。日付がないサイトを一律に「止まっている」とは言えませんが、少なくともトップページを見た相手には動いている形跡が伝わりません。1年以上新しい動きが確認できないサイトが22社、半分強という数字は、この2つを合わせたものです。コピーライトの年も取得しましたが、最初の発行年を書くのが本来の形で、毎年更新するものではないため、判断材料からは外しました。

HTTPSで正常に開けたのは41社中35社でした。4社は証明書やTLS(通信を暗号化する仕組み)の設定に問題があり、ブラウザに警告が出ます。4社はhttpのまま開けてしまい、httpsへの転送がありません。この状態が取引先からどう見えるかはSSL未対応のホームページが取引先からどう見えているか、元化学メーカー技術者の視点で考えるで書きました。

スマホで読めるのは40社中33社でした。非対応の7社は、横幅が固定されていて文字が極端に小さくなるか、フレームという古い技術で組まれていてレイアウトが崩れるかのどちらかです。ほかに、問い合わせ導線があるのは36社、採用ページがあるのは22社、SNSへのリンクがあるのは13社でした。

正直に言うと、数字は概ね予想どおりでした。更新が止まっている、作りが古い、SSLが整っていない。交流会で聞いてきた話が、そのまま数字になった印象です。

なぜ、サイトは止まっているのか?

意識が低いからでも、技術が古いからでもありません。サイトが今の受注を左右しない商流だから、優先順位が上がらないのだと私は考えています。

富士市の製紙・紙加工業は、大手メーカーの下請けや、長年の固定客との取引で成り立っている会社が多い業界です。新規の取引先がWeb検索から飛び込んでくる構造ではありません。受注は人と人のつながり、実績、価格、納期で決まります。そこにホームページが割って入る余地はほとんどなく、「サイトを更新したら受注が増える」という因果が、少なくとも短期では成立しません。

この構図は、私が化学メーカーの研究開発部門にいた頃に見ていた製造業の商流と、ほぼ同じです。当時の私は発注する側で、装置の設計や製作を外部のメーカーに依頼する立場でした。発注先を決める判断材料は技術と品質、それに過去の実績で、相手のホームページの新しさで候補が変わったことは一度もありません。

だから、止まったサイトを放置している会社を「遅れている」と言うのは的外れです。合理的に優先順位を下げているだけです。ただ、ここで終わらせると「じゃあ放っておけばいい」になります。発注側だった私の記憶には、もうひとつ別の場面が残っています。

発注する側は、止まったサイトをどう見ていたのか?

受注は左右しません。ただ、「この会社、経営は大丈夫なのか」という疑いは生まれます。

化学メーカー時代、候補になった会社のサイトを開いて、最終更新が何年も前だったときの感覚を今でも覚えています。技術の話は打ち合わせで聞けばいいので、技術力への疑いではありません。浮かんだのは「ホームページを放っておけるくらい、手が回っていないのか」、裏返せば「経営が厳しいのか」という疑いでした。当時の上司からも、ある会社のサイトを見て「ここ、大丈夫か」と言われたことがあります。上司も私も、サイトの古さを技術力ではなく、会社の状態を推し量る材料として見ていたわけです。

もちろん、その疑いは打ち合わせで会えば消えます。工場を見て、担当者の話を聞けば、サイトの印象は上書きされます。だから受注は左右しない、というのは本当です。ただ、会う前に一度「大丈夫か」と思われる一瞬が、どこかで効いている場面はあると思っています。担当者が代わって前任者の人脈に頼れなくなったとき、取引先が調達先を見直して候補を広げたとき。そういう場面で最初に見られるのは、やはりホームページです。技術力の見せ方を考える手前で「会社として動いているか」を疑われていては、その先に進めません。

今の受注のためではなく、次の事業のための資産として

私が製紙・紙加工の会社に伝えたいのは、サイトを今の受注のために動かそうという話ではありません。次の事業のために、資産として持っておきましょうという話です。

交流会で製紙に関わる方と話していると、紙の需要が長期的に細っていく中で、別の事業を始めたい、自社の技術を別の形でPRしたい、という声を聞くことが増えました。家庭紙に軸足を移す、加工技術を他の素材に展開する、環境対応の製品を打ち出す。方向は会社ごとに違いますが、共通しているのは「今の取引先の外に、自分たちを知ってもらう必要が出てきた」という点です。

そのとき、止まったサイトは足を引っ張ります。新しい事業の説明を載せようとして開いた管理画面が、何年も触っていないWordPressだったら。業者との連絡が途切れていて、どこを直せば何が変わるのか誰も分からなかったら。そこから手当てを始めると、新しい事業のPRは数か月遅れます。逆に、サイトが最低限動いている状態を保っていれば、新しいページを1枚足すだけで済みます。

今の受注に困っていないからこそ、追い込まれていない今のうちに、サイトを「いつでも使える状態」に戻しておく。私が考える位置づけは、売上を増やす道具ではなく、次の一手を打つときに邪魔をしない資産です。

止まったサイトに多い、3つの事情

交流会で聞いてきた話を重ねると、止まったサイトの裏側には、だいたい次の3つのどれかがあります。

1. 「無いよりはいい」で作って、そのまま

名刺に載せるURLが必要だった、取引先に「サイトはあるか」と聞かれた。そうした理由で最低限のページを作り、公開した時点で目的は達成されています。更新する理由が最初からないので、止まるのは自然な流れです。少ないページのまま「検索で上がらない」と嘆く声も聞きますが、作ったきりのサイトは検索エンジンの評価も上がりません。

2. 古い付き合いで作り、今何をしてもらっているか分からない保守費を払っている

先代からの付き合い、知り合いの紹介。そうした経緯で作ったサイトは、不満があっても言い出しにくいものです。毎月の保守費は払っているのに、その中身を説明できる人が社内にいない。ドメインやサーバーの管理を業者だけが握っていて、何かあっても自社では動けない。このパターンは本当に多く、保守費の中身はWordPressの保守は本当に必要?保守費用を断られた制作者が正直に線引きしますで線引きを書きました。

3. 本業がWebではないところに頼んだ

印刷会社、事務機器の販売店、知り合いの会社の若手。本業の傍らでサイトを作ってもらったケースです。作った時点では問題なくても、SSL証明書の更新やCMSのバージョンアップのように、作った後に継続して手を入れる作業までは手が回りません。今回の調査でHTTPSに問題があったサイトや、古い制作ソフトで組まれたサイトの背景には、こうした事情があるのではないかと推測しています。

貴社のサイトは、この3つのどれかに当てはまるでしょうか。当てはまるなら、次に書く3つのことが、そのまま最初の一手になります。

今日からできる3つのこと

どれも業者を変える話ではなく、お金もほとんどかかりません。現状を自分の目で確かめることから始めます。

1. HTTPSとスマホ表示を、自分の端末で確かめる

自社のサイトを、自分のスマホで開いてください。アドレスの先頭に鍵のマークが出ているか、警告が出ないか。文字は指で拡大しなくても読めるか。ここで引っかかったら、取引先の担当者の画面でも同じことが起きています。確認は1分で終わります。何が起きているかの判断はそのホームページまだ大丈夫?「賞味期限」を見極めるチェックリストが使えます。

2. トップページの日付を、1つ更新する

お知らせを1本出す、年始の挨拶を差し替える、会社概要の数字(従業員数や設備)を今の値にする。どれか1つで構いません。それだけで、トップページを見た相手に「この会社は動いている」と伝わり、今回の調査で半分強を占めた「止まったサイト」の側から抜け出せます。更新できる人が社内に誰もいないなら、それ自体が次の確認事項です。

3. 保守費で何をしてもらっているか、業者に聞く

毎月、あるいは毎年払っている費用の中身を、一度書面で出してもらってください。サーバー代、ドメイン代、CMSの更新、バックアップ、SSL証明書の更新。項目が出てくれば、何が守られていて何が放置されているかが見えます。ドメインとサーバーの契約名義が自社になっているかも、同時に確認してください。

まとめ

  • 富士市本社の製紙・紙加工58社のうち、公式サイトがあるのは41社(71%)。表示できた40サイトのうち22社は、トップページを見る限り1年以上止まっていた
  • HTTPSに問題があるサイトが41社中6社、スマホで読めないサイトが40社中7社。取引先の端末で警告が出るか文字が読めない状態が1〜2割ある
  • 止まっている事情には合理性がある。受注は人のつながりと技術・品質・価格で決まり、サイトは短期の受注を左右しない。それでも発注側は、止まったサイトから「経営は大丈夫か」を読む
  • サイトは今の受注のためではなく、次の事業のための資産。追い込まれていない今のうちに「いつでも使える状態」に戻しておく
  • 最初の一手は、自分の端末で確かめる、日付を1つ更新する、保守費の中身を聞く。この3つ

紙のまちと呼ばれる富士市の、紙に関わる会社のサイトを58社分見て回って、私が感じたのは落胆ではありませんでした。むしろ、これだけ確かな技術と歴史を持つ会社が、Webではまだほとんど手をつけていない。伸びしろしかない、というのが正直な感想です。

私は静岡県富士市でWeb制作とシステム開発をしています。「うちのサイトは、この調査のどこに当たるのか」を知りたいという段階からで構いません。社名は出さずに集計した数字ですが、個別には「貴社のサイトを一緒に確かめる」ことができます。お問い合わせからどうぞ。

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