
交流会に毎月通って見えてきた、富士市の中小企業のリアルなWeb課題
はじめに
「遠藤さん、ちょっとホームページのことで聞きたいんだけど」
富士市にUターンしてから、地元の経営者交流会に毎月参加しています。最初は名刺交換ばかりでしたが、回を重ねるうちに、こんなふうに声をかけていただくことが増えました。
私は富士市でWeb制作とシステム開発をしています。この記事に書くのは、統計やアンケートの話ではありません。毎月顔を合わせている地元企業の方々から実際に聞いてきた、Webにまつわる悩みの記録です。相談の中身を思い返すと、驚くほど同じパターンに集約されます。同じ悩みを抱えている方に「うちだけじゃなかったのか」と思ってもらえたら、この記事の役目は半分果たせたことになります。
この記事のまとめ
- 交流会で毎月聞くWebの悩みは、突き詰めると3つ。「ホームページが資産になっていない」「古い付き合いに縛られて変えられない」「重要と分かっているのに優先順位が上がらない」
- 特に多いのが、保守契約の中身が不透明なまま、ドメインやサーバーの管理を業者だけが握っているケース
- 「意識が低い」のではない。社長はむしろ乗り気で、現場の人手と時間が追いついていないだけ
- 最初の一歩は新しい施策ではなく現状把握。何にいくら払っているか、ドメインは誰の名義かを確かめる
ものづくりの町なら、Webも進んでいるはず。その予想は外れました
先に白状すると、Uターンした当初の私は、富士市を読み違えていました。
富士市は製紙をはじめ製造業が集積した、ものづくりの町です。確かな技術を持つ会社が多く、東京までは新幹線で1時間あまり。それならWebやITの活用も自然と進んでいるだろう、と思い込んでいました。実際に交流会で話を聞くと、印象は変わりました。本業の技術や製品には一級のものを持っているのに、ホームページは作ったきり、活用はこれから、という会社が想像以上に多かったのです。首都圏で働いていた頃の感覚と比べると、正直、差を感じました。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、これは意識や能力の問題ではないということです。むしろWebへの関心は高く、相談は途切れません。関心があるのに、進まない。このねじれの正体を、聞いてきた話から整理してみます。
富士市の中小企業は、Webの何に困っているのか?
毎月の相談を思い返すと、大きく3つに集約されます。
1. ホームページが資産になっていない
いちばん多いのは、サイトはあるのに何の働きもしていないという状態です。
作ったきり何年も更新されていない。会社の今の姿とズレている。SEO(検索エンジン最適化)やMEO(Googleマップでの上位表示対策)の相談もよく受けますが、話を聞いていくと、その手前でサイト自体が止まっているケースがほとんどです。
もうひとつ根深いのが、「うちには載せられる実績がない」という思い込みです。話を聞けば、長年取引の続く大手メーカーがあり、他社が嫌がる小ロットに対応し、ベテランの職人がいる。載せるものがないのではなく、自分たちにとって当たり前すぎて、価値だと気づいていないだけでした。このあたりは富士市の中小企業が持つ強み、ホームページでちゃんと伝わっていますか?で詳しく書いています。
余談ですが、交流会でサイトの話になると「背景は富士山の写真にしたい」という声をよく聞きます。気持ちはよく分かりますし、私も富士山は大好きです。ただ、富士市の会社がそろって富士山の写真を使うと、お互いの区別がつきません。あなたの会社にしかない設備や仕事ぶりの写真のほうが、富士山よりずっと雄弁です。
2. 古い付き合いに縛られて、変えたくても変えられない
「本当は更新したい。業者も変えたい。でも、先代からの付き合いだから言い出せない」
こうした打ち明け話は、一度や二度ではありません。知り合いに作ってもらったから不満を言いにくい、という声もあります。人間関係だけなら気持ちの持ちようですが、実際にはもっと実務的な縛りが絡んでいることが多いのです。保守契約の中身が分からないまま、毎月の支払いだけが続いている。ドメイン(サイトの住所にあたるもの)やサーバーの管理を業者だけが握っていて、社内には管理画面に入れる人が誰もいない。こうなると、変えたくても身動きが取れません。半ば「人質」のような状態です。
保守費用の中身をどう見るかはWordPressの保守は本当に必要?保守費用を断られた制作者が正直に線引きしますに、依頼先を見直すときの考え方は富士市でホームページ制作を依頼する前に知っておきたいことにまとめてあります。
もうひとつ、サイトのID・パスワードの管理が心もとない会社が多いことも付け加えておきます。これは富士市に限った話ではなく、中小企業全般に共通する傾向で、地元も例外ではないという感触です。規模の小さい会社こそ狙われやすい理由は中小製造業こそ狙われる?他人事では済まないサイバー攻撃対策で書いたとおりです。
3. 重要と分かっているのに、優先順位が上がらない
意外に思われるかもしれませんが、「Webなんて要らない」という声は、交流会でほとんど聞いたことがありません。
みなさんWebの重要性は認めていて、社長はむしろ乗り気なことのほうが多いのです。それでも進まない。理由として返ってくるのは決まって「担当できる人がいない」「忙しくて時間がない」でした。たとえばSEOを本気でやるなら、現場の一次情報を盛り込んだコンテンツを出し続ける必要があります、とお伝えすると、理屈は伝わるのに、そこで止まります。日々の生産と納期を回している現場に、その余力がないからです。
LOCAL VOICES
交流会で繰り返し聞く、3つのWeb課題
ホームページが資産になっていない
「作ったきり、もう何年も触っていなくて」
古い付き合いに縛られて、変えられない
「先代からの付き合いだから、言い出しにくくて」
重要と分かっているのに、優先順位が上がらない
「大事なのは分かるけど、人も時間も足りなくて」
共通項
どれも意識が低いからではない。回る体制がないだけ
啓発より、まず現状把握から
PEAS PROJECT
私の見解:足りないのは意識ではなく体制
3つの課題を並べると、共通項が見えてきます。どれも、意識や能力の不足が原因ではないということです。
私は前職で化学メーカーの研究開発部門にいました。現場側の人間だったのでよく分かるのですが、生産と品質が最優先の現場では、「大事なのは分かるが、今じゃない」という案件は、正論のまま積み残されていきます。社内システムの導入がまさにそうでした。エンドユーザーとして眺めていて、旗を振る人と手を動かす体制がなければ、どんなに正しい施策も進まないことを嫌というほど見てきました。
富士市のWebの現在地も、同じ構造だと考えています。だから「Webの意識を高めましょう」という啓発には、あまり意味がありません。必要なのは、今の人員のままでも回る体制の設計です。全部を社内でやろうとしない。外に任せる範囲と自社でやる範囲の線を引く。窓口になる人をひとり決める。それだけで、止まっていた案件は動き始めます。
すぐにできること:新しい施策より、まず現状把握
「では何から始めればいいか」と聞かれたら、新しい施策ではなく現状把握から、と答えています。お金も時間もほとんどかかりません。
- 支払いの棚卸し:ホームページ関連で毎月・毎年、何にいくら払っているかを書き出す。中身を説明できない支出があれば、そこが確認ポイントです
- 名義と権限の確認:ドメインとサーバーの契約名義は誰か。管理画面に社内の誰かが入れるか。業者しか触れない状態なら、いざというとき身動きが取れません
- 実績の棚卸し:「載せるものがない」と思ったら、直近1年の仕事を書き出してみる。取引先の業種、対応してきた無理難題、続いている取引の年数。それが全部、サイトに載せられる資産の原石です
この3つは、業者を変えるかどうかに関係なく、やって損がありません。現状が見えるだけで、次の判断が具体的になります。
「困ったら遠藤さんに」と言われるようになって
毎月通い続けるうちに、最近うれしい変化がありました。「Webのことで困ったら、とりあえず遠藤さんに聞こう」という空気ができてきたことです。
売り込みをしたわけではありません。聞かれたことに答え、ときには「それはまだやらなくていいと思います」と止める側に回ってきただけです。それでも、顔の見える相手として最初に思い出してもらえるのは、この仕事をしていていちばん張り合いを感じる瞬間です。地元のWebの底上げに、これからも関わっていくつもりです。
まとめ:富士市のWeb課題は意識ではなく体制の問題
この記事の内容を整理します。
- 交流会で毎月聞く悩みは3つ。「資産になっていない」「付き合いに縛られて変えられない」「優先順位が上がらない」
- 実績が「ない」のではなく、当たり前すぎて価値に気づいていないだけの会社が多い
- 保守契約が不透明で、ドメイン・サーバーが実質「人質」になっているケースは本当に多い
- どれも意識の問題ではなく、体制の問題。啓発より、回る体制の設計が先
- 最初の一歩は現状把握。支払い・名義と権限・実績の3つを棚卸しする
Peas Projectでは、「まず現状を見てほしい」というところからのご相談も受けています。契約内容やサイトの状態を一緒に確認するだけでも、次の一手はぐっと具体的になります。富士市近隣の企業さまはもちろん、オンラインでも対応可能です。交流会で声をかけていただくのと同じ気軽さで、どうぞ。