
WordPressの保守は本当に必要?保守費用を断られた制作者が正直に線引きします
はじめに
「WordPressの保守費用って、毎月何にお金を払っているんですか?」
ホームページを制作会社に作ってもらった方から、こう聞かれることがあります。口には出さなくても、「正直、払う意味が分からない」「できれば断りたい」「更新くらい自分でできるのでは?」と感じている方は多いはずです。
私は静岡県富士市でWeb制作とシステム開発をしている、保守を「売る側」の人間です。そして納品時に保守契約を提案して、断られた経験もあります。だからこそこの記事では、売る側の都合をいったん脇に置いて、「どこまでは自分でできて、どこからが危険なのか」を正直に線引きします。
「WordPress 保守 必要」と検索して出てくる記事の多くは保守サービスを提供する会社のもので、結論は判で押したように「保守は必要です。プロにお任せください」です。それでは、あなたの疑問に答えたことにならないと思っています。
この記事のまとめ
- WordPressというシステムの性質上、保守(更新・バックアップ・復旧の備え)が必要なのは事実
- ただし「制作会社と保守契約を結ぶ」だけが答えではない。更新とバックアップまでは自分でもできる
- 境界線は「壊れたときに自力で元へ戻せるか」。戻し方を知らないまま更新だけ続けるのが一番危ない
- 更新頻度が低いサイトなら、WordPressをやめて保守の必要そのものを減らす選択肢もある
- 保守を断るなら「トラブル時に誰へ連絡するか」だけは決めておく
なぜ保守費用は「払う意味が分からない」のか?
保守の成果が「何も起きなかったこと」だからです。うまくいっている保守ほど、目に見える変化がありません。
ホームページ制作なら、払ったお金の対価として新しいサイトが目の前に現れます。ところが保守は、毎月払っているのに見た目は何も変わらない。トラブルが起きなければ「何もしていないのでは?」と感じ、トラブルが起きれば「守れていないじゃないか」と感じる。発注者から見て、どちらに転んでも納得しづらい構造なのです。
制作者側の説明不足も、この不信感に拍車をかけています。毎月何を確認して何を更新したのか、報告が一切届かない保守契約は珍しくありません。中身がブラックボックスのまま請求だけが続けば、「払う意味が分からない」と感じるのは当然の反応です。
そこでこの記事では、まず中身を開くところから始めます。
WordPressの保守では実際に何をしているのか?
大きく分けると4つです。本体・プラグインの更新、バックアップ、監視、そして壊れたときの復旧対応。順に中身を開いていきます。
本体・プラグインの更新
WordPressは本体(コア)・テーマ・プラグインという部品の集合体で、それぞれが頻繁に更新されます。更新にはセキュリティ上の修正が含まれることが多く、放置するほど攻撃の入口が残り続けます。WordPressは世界のWebサイトの4割超で使われていると言われるシステムなので、攻撃する側から見れば効率のいい標的です。
サーバー側にも更新はあります。WordPressを動かしているPHP(プログラミング言語)が古くなると、WordPress本体の更新すらできなくなる連鎖が起きます。この技術的な背景はPHPのバージョンが古いまま放置するリスクとアップデートが必要な理由で詳しく書きました。
バックアップ
更新は、まれに失敗します。失敗そのものは事故ではありません。戻せないことが事故です。だから保守では、更新の前に「戻れる地点」を必ず作ります。
監視
サイトがきちんと表示されているか、改ざんされていないかの定期確認です。放置されたサイトの本当の怖さは「壊れていることに誰も気づかない」ことにあります。
壊れたときの復旧対応
そして保守費用の実態は、この復旧対応の待機料である部分が大きいのです。毎月の作業自体は、正直それほど派手ではありません。それでも、いざ画面が真っ白になったとき、サイトの構成を把握している人間がすぐに動ける。保険と同じで、使わない月にも意味がある費用です。
保守はどこまで自分でできるのか?
「更新ボタンを押して、バックアップを取る」までは自分でできます。境界線は、壊れたときに自力で元へ戻せるかどうかです。
管理画面から更新ボタンを押すこと自体に、専門知識は要りません。バックアップの自動取得もプラグインで設定できます。具体的には、次の範囲なら発注者側で十分こなせます。
- 本体・テーマ・プラグインの更新(直前のバックアップがあることが前提)
- バックアップの自動取得の設定と、ときどきの取得確認
- 使っていないプラグイン・テーマの削除
- ログインユーザーとパスワードの整理(退職者のアカウントを消す、推測されやすいパスワードをやめる)
問題は、更新がいつもどおりに終わらなかったときです。更新した瞬間にレイアウトが崩れる、管理画面に入れなくなる、画面が真っ白になる。こうなると、原因がテーマなのかプラグインなのか本体なのか、それともPHPとの相性なのかを切り分けて、バックアップから正しく戻す作業になります。ここからは技術の領域です。
DIY OR PRO?
WordPress保守、自分でやれる範囲の線引き
ここまでは自分でできる
- 本体・テーマ・プラグインの更新ボタンを押す
- バックアップの自動取得を設定する
- 使っていないプラグイン・テーマを消す
- ログインユーザーとパスワードを整理する
前提:更新の前にバックアップがあること
境界線
壊れたときに、自力で元へ戻せるか
ここからは技術の領域
- 更新後の画面崩れ・真っ白画面からの復旧
- 原因の切り分け(テーマ/プラグイン/本体/PHP)
- PHPなどサーバー側の更新と互換性の確認
- 改ざん・乗っ取りが疑われるときの調査
「更新ボタンを押す作業」と「壊れたときに戻す技術」は別物
PEAS PROJECT
「更新ボタンを押す作業」と「壊れたときに戻す技術」は別物です。自分で保守をするなら、少なくとも「戻し方を知らない更新はしない」を守ってください。バックアップのない更新は、命綱なしの綱渡りと同じです。
保守が不要なケースはあるか?
あります。更新頻度が低いサイトなら、WordPressをやめることで保守の必要そのものを減らせます。
そもそもWordPressに保守が要るのは、サイトが「常に動いているプログラムの塊」だからです。裏を返せば、動くプログラムを減らせば、守るものも減ります。お知らせを年に数回更新する程度のサイトであれば、静的サイト(あらかじめ完成したHTMLを置いておくだけの仕組み)にすることで、プログラムの脆弱性という心配事の大半が消えます。
実は、いまあなたが読んでいるこのサイト自身がその実例です。私は自分のサイトを長くWordPressで運用してきましたが、2026年にWordPressをやめて静的な仕組みに作り替えました。保守を仕事にしている私が、自分のサイトからはWordPressを外したわけです。表示速度の改善が主な目的でしたが、「動く部品が減れば守る手間も減る」という効果は想像以上でした。
誤解のないように書いておくと、これは「WordPressをやめましょう」という話ではありません。担当者が日常的に更新するサイトや、会員機能・検索機能を持つサイトには、WordPressのようなCMS(コンテンツ管理システム)を使う合理性があります。保守の必要性はサイトの作りと使い方で決まる。この当たり前の事実が、「WordPressなら保守は一律必要」という売り文句の中で忘れられがちなだけです。
保守を断った後、実際には何が起きるのか?
私の経験では、契約は断られても、質問は来ます。
納品のときに保守契約を提案して、「更新くらい自分たちでやるので大丈夫です」と断られたことがあります。その判断自体は尊重しています。前の章に書いたとおり、更新だけなら自分でできるからです。
ただ、その後も連絡は途切れませんでした。管理画面に見慣れない警告が出ている、このプラグインは更新していいのか分からない。そうした質問が、契約のないままぽつぽつと届きます。そのたびにスポットで対応するのですが、日頃から中を見ていないサイトは、状況の把握から始めることになります。毎月見ているサイトなら10分で済む切り分けに、数時間かかることもあります。
つまり保守を断ると、費用が消えるのではなく、「誰が面倒を見るのか」が宙に浮きます。宙に浮いたまま数年が経ったサイトがどうなるかは、他社が作ったWordPressサイトを引き継いだら、想像以上に危険な状態だった話に書いたとおりです。制作会社と連絡が取れなくなってから相談に来られるケースでは、取れる選択肢がかなり狭まっています。
保守を断るなら、せめて「トラブルが起きたら誰に連絡するか」だけは決めておいてください。契約がなくても、スポットで相談できる相手がいるかどうかで、事故のときの被害は大きく変わります。
保守を頼むなら、何を確認すべきか?
金額より先に、報告・範囲・復旧の3点を確認してください。
作業報告があるか
毎月あるいは四半期ごとに、何を確認して何を更新したのかが文書で届くか。報告のない保守は、やっているかどうか外から分かりません。誠実な業者ほど、ここを聞かれて嫌がらないものです。
契約範囲はどこまでか
更新とバックアップだけなのか、監視や復旧まで含むのか。「トラブル対応は別料金」という契約自体は珍しくありませんが、それを契約前に知っているかどうかで話が大きく違います。
復旧の体制があるか
バックアップをどこに何世代残しているか、障害の連絡をしてからどのくらいで動いてくれるか。保守費用の実態が「復旧の待機料」である以上、ここが一番の確認どころです。
あわせて、いま保守を任せている(またはこれから頼む)サイトが客観的にどんな状態なのかを知っておくと、この3つの質問が具体的になります。自社サイトの健康状態はそのホームページまだ大丈夫?「賞味期限」を見極めるチェックリストでセルフチェックできます。
まとめ:保守の要否は「サイトの作りと使い方」で決まる
最後に、この記事の線引きを整理します。
- WordPressで運用を続けるなら、更新・バックアップ・復旧の備えは必要です。これは売る側のポジショントークではなく、システムの性質です
- ただし担い手は制作会社とは限りません。更新とバックアップまでは自分でできます。境界線は「壊れたときに自力で戻せるか」です
- 更新頻度が低いなら、WordPressをやめて保守の必要そのものを減らす道もあります
- 保守を頼むなら報告・範囲・復旧の3点を確認する。断るなら、トラブル時の相談先だけは確保しておく
あなたのサイトはどうでしょうか。毎月の保守費用の中身を説明できるか、それとも誰にも見られないまま何年も動き続けていないか。一度立ち止まって確認してみてください。
Peas Projectでは、保守契約の有無にかかわらず、サイトの現状診断のご相談を受けています。「いま払っている保守費用が適正か知りたい」という相談も歓迎です。売る側の立場を抜きにして答えることを、この記事と同じようにお約束します。