PHP 8.2のサポートが年末で終わる。バージョンアップの手間と費用は何で決まるのか

はじめに

「バージョンアップの費用は、どれくらいですか?」

PHP 8.2のサポートが年末で終わることをお客様にお伝えしたとき、一番多かった反応がこれでした。

話を進めると、驚かれることもあります。スマホやWindowsの更新は、ボタンを押せばたいてい何事もなく終わります。それなのに、ホームページのPHPを上げるとなると、期間も費用も手間もそれなりにかかる。この差は、確かに分かりにくいところです。ただ、手間の大きさは、いまどのバージョンを使っているかで大きく変わります。

私は静岡県富士市でWeb制作とシステム開発をしています。納品したサイトの多くはWordPressで、PHPの上で動いています。この記事では、PHP 8.2のサポート終了で何が変わるのか、なぜPHPの更新はスマホの更新のようにいかないのか、手間と費用は何で決まるのか、そして発注者の方が年内にやっておきたいことを書きます。

PHPは毎年12月31日に、どれかのバージョンのサポートが終わります。この記事は、その時期に合わせて毎年内容を更新します。今回の内容は2026年10月23日時点のものです。

この記事のまとめ

  • PHP 8.2のセキュリティサポートは2026年12月31日で終わる。それ以降に見つかった脆弱性は、8.2向けには直されない
  • WordPress.orgの統計では、8.2で動くサイトが23.5%、すでにサポートが終わった8.1以前が約35%。年明けには約6割がサポート外のPHPで動く計算になる
  • 手間は、どのバージョンから上げるかで大きく変わる。8.2から8.3・8.4へは比較的軽く済むことが多い。7系から上げる場合は、関数の削除などで止まりやすく、修正が必要になりやすい
  • スマホのOS更新は、メーカーが確かめてから配る。ホームページは作り手の違う部品が積み重なっているので、軽く済みそうな場合でも、誰かが確かめる工程は省けない
  • 年内に、PHPのバージョンを確かめ、8.2以前なら制作会社に相談する。見積もりでは、事前の調査、検証の環境、元に戻す手段、作業範囲を確かめる

PHP 8.2のサポート終了で、何が変わるのか?

PHP公式の予定では、PHP 8.2のセキュリティサポートは2026年12月31日で終わります。それ以降に新しい脆弱性が見つかっても、8.2向けの修正版は出ません。

これがどういうことかは、2026年10月21日に公表されたPHP本体の脆弱性を例にすると分かりやすいと思います。深刻度「緊急」の脆弱性2件が見つかったとき、修正版が出たのはサポート中の8.2以降だけで、8.1以前には公式の修正版が出ませんでした。そのときの経緯と、自社サイトのPHPのバージョンの確かめ方は、「PHPの脆弱性、うちのホームページは大丈夫?」と聞かれて、制作者が最初に確かめたことに書いています。年が明けると、この「修正版が出ない側」に8.2が加わります。

8.2で動いているサイトは、少なくありません。WordPress.orgが公開している統計を2026年10月23日に確かめたところ、PHP 8.2で動いているWordPressサイトは23.5%でした。すでにサポートが終わった8.1以前は、合わせて約35%あります。このまま誰も切り替えなければ、年明けには約6割のWordPressサイトが、サポート外のPHPで動くことになります。

切り替え先について、WordPressは公式の動作環境のページで、PHP 8.3以上を推奨しています。PHP公式の予定では、8.3のセキュリティサポートは2027年末まで、8.4は2028年末まで続きます。どこまで上げるかは、使っているテーマやプラグインの対応状況を見て、制作会社と決めるのが現実的です。

スマホのOS更新との違い

いちばんの違いは、確かめる人がいるかどうかです。

スマホやパソコンのOSの更新は、メーカーが動作を確かめてから配信します。アプリの作り手も、配信前に公開される試用版で、自分のアプリが新しいOSで動くかを確かめておく仕組みがあります。だから利用者は、更新のボタンを押すだけで済むことが多いわけです。

ホームページは、事情が違います。土台のPHPの上にWordPress本体が載り、その上にテーマ、さらにいくつものプラグイン、そして制作時に独自に作り込んだ部分が積み重なっています。しかも、それぞれの作り手は別々です。PHPを入れ替えると、上に載っているものすべてが新しいPHPの上で動くことになりますが、全部がそれに対応しているかを、まとめて確かめてくれるメーカーはいません。

OS UPDATE VS PHP UPDATE

同じ更新でも、確かめる人がいるかどうかが違う

スマホ・パソコンのOS更新

メーカーもアプリの作り手も、配信前に確かめておく。利用者はボタンを押すだけ

ホームページのPHP更新

作り手の違う部品が、PHPの上に積み重なっている

制作時に独自に作り込んだ部分

プラグイン(いくつも)

テーマ

WordPress本体

PHP ここを入れ替える

上に載っているものが全部、新しいPHPで動くかを、誰かが確かめる必要がある

その「誰か」の作業が、期間と費用になる

部品のどれか1つでも新しいPHPに対応していないと、不具合が出ます。私がPHP 7系から8系へ上げたときに見たのは、ページの上に警告の文字がずらりと表示されてしまうケースや、WordPressの「このサイトで重大なエラーが発生しました」という画面になって、ページそのものが表示されなくなるケースです。どちらも、訪問者や取引先の目にそのまま触れます。

スマホの更新で大きな不具合が起きにくいのは、利用者の見えないところで、メーカーやアプリの作り手がこの確認を済ませているからです。ホームページでは、その確認を制作会社や保守会社が担うことになります。

手間は、どのバージョンから上げるかで大きく変わる

8.2から8.3・8.4へは比較的軽く済むことが多く、7系から上げる場合は、修正が必要な箇所が出やすくなります。

違いが出るのは、PHP 8.0での変更が大きかったからです。PHP公式の移行ガイドを見ると、8.0では古い関数のいくつかが削除され、それまで警告で済んでいた書き方の多くが、エラーで処理が止まる扱いに変わりました。7系の時代に作られたテーマやプラグイン、独自に作り込んだ部分は、こうした書き方を含んでいることがあります。先ほどの警告や「重大なエラー」の事例は、まさにこの段差で起きたものです。

一方、8.3と8.4での変更は、移行ガイドで見る限り、影響の限られたものが大半です。8.2で問題なく動いているサイトなら、8.3や8.4へは大きな修正なしで上げられることが多いと考えています。

ただし、軽く済みそうでも、確かめる工程は省けません。更新が止まったプラグインや古いテーマは、どのバージョンの変更にも追いついていないことがあります。8.4では将来なくなる予定の書き方(非推奨)も増えたので、古い部品が残っていると、設定によっては画面に注意書きが表示されることもあります。

気になるのは、8.1以前で動いているサイトです。先ほどの統計では、8.1以前は合わせて約35%あり、7.4だけでも約15%を占めます。この層は、サポートが切れているうえに、8系への段差を越える手間もかかります。後回しにするほど、上げるときの差が大きくなります。

制作する側の進め方

私は、いきなり本番のサイトでPHPを切り替えることはしません。まず手元の検証用の環境(ローカル環境)でサイトを新しいPHPの上で動かし、問題がないことを確かめてから、本番に反映しています。

理由は単純で、本番でいきなり切り替えると、先ほどのような不具合がそのまま公開されてしまうからです。検証用の環境なら、警告が出ても、ページが表示されなくなっても、誰の目にも触れません。そこで原因を見つけて直してから本番に移せば、訪問者から見たサイトは何も変わらないまま、中の土台だけが新しくなります。

この手順を踏む分、作業には時間がかかります。8.2からのように軽く済みそうな場合でも、この工程は同じように踏みます。お客様が驚かれる期間と手間の多くは、この確かめる工程の分です。

費用は何で決まるのか?

一番多い質問なので、ここははっきり書いておきます。PHPのバージョンアップの費用は、サイトによって大きく変わるため、一律の金額では言えません。決まり方の目安は次のとおりです。

  • いまのPHPのバージョン。8.2からなら比較的軽く、7系からなら修正が必要になりやすい
  • プラグインの数と、それぞれが新しいPHPに対応しているか
  • テーマが新しいPHPに対応しているか。古いテーマほど、直す箇所が増えやすい
  • 制作時に独自に作り込んだ部分の量
  • 対応していない部品が見つかったときの、差し替えや修正の手間
  • 確かめるページや機能の数

つまり、作業を始める前に現状を調べないと、見積もりが出せません。調べてみて、8.2から上げるサイトで、どの部品も新しいPHPに対応していれば、作業は比較的軽く済みます。逆に、更新が止まったプラグインや古いテーマが見つかれば、その差し替えや修正の分が加わります。

費用の話になったときも、私は金額のマイナス面だけでなく、上げることで得られるものを長い目で説明するようにしています。それが次の話です。

動いているうちに上げておく理由

今日動いていることは、来年も安全に動くことの保証にはなりません。

PHPを上げて得られるものは、主に2つあります。1つはセキュリティです。サポート中のバージョンであれば、今回のような脆弱性が見つかっても修正版が出ます。もう1つはパフォーマンスです。PHP公式のPHP 8.3のリリース告知でも、新機能とあわせてパフォーマンスの向上が挙げられています。

反対に、上げずにいた場合の損失は、普段は見えません。サポート外のPHPで動くサイトが改ざんされたり、急に使えなくなったりすれば、復旧の費用がかかります。その間は問い合わせも採用の応募も止まりますし、取引先や求職者からの信頼も損ないかねません。バージョンアップの費用は、その損失を前もって小さくするための費用だと、私は考えています。

もちろん、最終的にどうするかを決めるのは、サイトを持っている会社です。保守を断った後に実際に起きることは、WordPressの保守は本当に必要?保守費用を断られた制作者が正直に線引きしますに書いたので、判断の材料にしてください。古いPHPを放置した場合のリスクは、PHPのバージョンが古いまま放置するリスクとアップデートが必要な理由で詳しく整理しています。

年内にできる5つのこと

1. 自社サイトのPHPのバージョンを確かめる

WordPressなら、管理画面の「ツール」から「サイトヘルス」を開き、「情報」タブの「サーバー」の欄で確かめられます。サーバーの管理画面でも確認できます。

2. 8.2以前なら、制作会社か保守会社に相談する

8.2なら、年内に済ませる目安で相談を始めます。比較的軽く済むことが多いので、過度に構える必要はありません。8.1以前は、すでにサポートが終わっているうえに修正も必要になりやすいので、より早めの相談をおすすめします。どちらの場合も、早めに動いておくと、検証の時間を十分に取れます。

3. 見積もりのときに、4つを確かめる

  • 作業の前に、テーマやプラグインの対応状況を調べてくれるか
  • 本番の前に、検証用の環境で試してくれるか
  • 不具合が出たときに、元の状態に戻せるか。バックアップは取ってくれるか
  • どこまでが作業範囲か。対応していないプラグインの差し替えや修正は含まれるか

4. 保守契約に含まれているかを確かめる

保守契約があっても、PHPのバージョンアップは月額に含まれず、別に見積もりになるプランもあります。契約の中身を一度見ておくと、相談がスムーズです。

5. 年内に間に合わないときは、サーバー会社の対応を確かめる

検証に時間がかかって年内に切り替えられない場合は、使っているサーバー会社が、年明け以降も8.2向けの修正を独自に続けるかを確かめておきます。2026年10月の脆弱性の件では、古いバージョンにも独自に修正を当てたサーバー会社がありましたが、それがいつまで続くかは会社ごとに違います。あくまで切り替えまでのつなぎとして考えてください。

まとめ

  • PHP 8.2のセキュリティサポートは2026年12月31日で終わる。年明けには、WordPressサイトの約6割がサポート外のPHPで動く計算
  • 手間は、どこから上げるかで大きく変わる。8.2から8.3・8.4へは比較的軽く済むことが多く、7系からは関数の削除などで修正が必要になりやすい
  • スマホのOS更新はメーカーが確かめてから配る。ホームページは作り手の違う部品が積み重なっているので、軽く済みそうな場合でも誰かが確かめる必要がある
  • 制作する側は、検証用の環境で確かめてから本番に反映する。その工程の分、期間と費用がかかる
  • 費用は、いまのバージョン、プラグインやテーマの対応状況、独自に作り込んだ部分の量で決まる。まず現状を調べてから見積もる
  • 今日動いていることは、来年の安全の保証にはならない。年内にバージョンを確かめ、8.2以前なら相談を始める

バージョンアップの費用は、調べてみるまで決まりません。頼りない答えに聞こえるかもしれませんが、調べずに出した金額のほうが、後で大きくずれます。まずは自社サイトのPHPのバージョンを確かめるところから始めてください。

私は静岡県富士市でWeb制作とシステム開発をしています。他社が作ったサイトでも構いません。いまのサイトが新しいPHPで動くかどうかの確認から、ご相談ください。お問い合わせからどうぞ。

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