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中小製造業のWeb窓口役は誰に任せる?社内で適任者を見極める5つの軸

はじめに

「Web担当者を採用するのではなく、社内に窓口役を1人立てて、外部パートナーと役割分担で動かす」

私は前回の記事で、中小製造業の社長に向けてこの方針を提案しました。経営者交流会や個別相談で「Webをどうにかしたい」という相談を受けるたびに、まずこの整理から入っています。

ただ、この考え方に納得していただいたあと、ほぼ全員が次の問いで止まります。

「で、社内の誰に任せればいい?」

最低条件は前回の記事で3つ示しました。社長と話せる距離にいること、PCの基本操作ができること、外部の話を社内に通訳する意欲があること。ただ、これはあくまで足切りラインで、ここを満たす社員は社内に複数いるはずです。その中から誰を選ぶか、という見極めの話は、前回の記事では扱いきれませんでした。

本記事では、その続きを書きます。私が顧問先や経営者交流会で見てきた失敗パターンと、機能している窓口役の共通点をベースに、社長が社内の社員を一人ひとり思い浮かべながら判断できる5つの軸を示します。

この記事のまとめ

  • 窓口役を「PCスキル」や「部署」で選ぶと失敗しやすい。本質は人としての姿勢にある
  • よくある失敗は3つ。PCが得意なだけで興味がない人、真面目で何でも引き受ける人、他者へのリスペクトがない人
  • 機能する窓口役を見極める軸は5つ。理念の理解、現場感覚、社長との心理的距離、リスペクト、学ぶ姿勢
  • 窓口役は構造的に板挟みになる立場。社長が盾になって支える前提を持っておく必要がある
  • 部署順ではなく適性軸で社員リストを見直し、候補に対して雑談ベースで打診するところから始める

窓口役を「部署」や「PCスキル」で選ぶと失敗しやすい

中小製造業の社長から「窓口役を立てるとして、誰に任せたらいいか」と聞かれたとき、私はいつも最初に「PCに強い人で選ばないでください」とお伝えしています。

前回の記事の冒頭でも触れましたが、PCスキルを基準に若手を選ぶと、サイトが属人化してその社員が抜けた瞬間にブラックボックスになるリスクがあります。ただ、私が言いたいのはそれだけではありません。

そもそも「PCに強い」というスキル自体が、窓口役の適性とほとんど相関しないのです。PCスキルは慣れと習熟の問題で、後からいくらでも追いつきます。WordPressの管理画面で記事を投稿する作業、Web会議に参加してファイルを共有する作業、メールで添付ファイルをやり取りする作業、いずれも数週間で身につきます。

一方で、後から身につけることが難しいのが「人としての姿勢」です。外部の専門家を尊重できるか、自社の現場に寄り添えるか、社長と本音で話せるか。こうした要素は、本人の性格や仕事観に根ざしていて、研修で変えられるものではありません。

部署で選ぶのも同じ理由で危険です。「うちの品質管理部門の彼が向いていそうだ」という発想は分かりますが、同じ品質管理部門にも、外部と話すのが苦手な人もいれば、現場のことを我が事として考えていない人もいます。製造業の中小企業では兼務が多く、そもそも部署の境界が曖昧な会社も少なくありません。部署論で選ぶと、本当に見るべき個人の特性を見落とします。

では何で選ぶか。順を追って整理していきます。

窓口役を選んでしまったときによくある失敗パターン3つ

THREE FAILURE PATTERNS

窓口役を選ぶときに起きやすい失敗パターン

PATTERN 01

PCは得意だが、本人がWebに興味がない

「PCが使える」と「Webの仕事がしたい」は別物。他のことに興味があってPCが扱えるようになっただけの人に任せると、外部とのやり取りが一方通行になり、外注のトーンも自然と下がっていく。

適性はスキルではなく、興味と意欲にある

PATTERN 02

真面目で何でも引き受けてしまう

「やります」と言ってしまうので社長は問題に気づかない。半年〜1年で疲弊し、Webから手を引きたがる。

業務量の調整がセットで必要

PATTERN 03

他者へのリスペクトがない

外注の提案を「大したことない」と決めつけるタイプは、技術があっても外部から本気の提案を引き出せない。

姿勢は研修では変えられない

まず、私が実際に見てきた失敗パターンを3つ紹介します。「自社で起きそう」と感じるものがあれば、そこから対策を逆算してみてください。

PCは得意だが、本人がWebに興味がない

最も多い失敗が、これです。社内で「PCが得意な人」というラベルが付いている社員に窓口役を任せたものの、本人がWebの仕事に乗り気でなく、コミュニケーションが一方通行になっていくケースです。

詳しく観察すると、こういう人はPCが「好きで得意になった」わけではないことが多いです。本当に興味があるのは別の領域、たとえば製造現場の工程改善や品質管理のデータ分析だったりして、その業務を効率化するためのツールとしてPCが使えるようになっただけ。本人にとって、Webサイトの更新や外部との打ち合わせは、業務範囲外の押し付けに感じられます。

すると何が起きるか。外注に対する連絡が遅れがちになる、質問されても短文の返信で済ませる、提案を受けても判断を保留したまま放置する。外注側は最初は丁寧に対応していますが、相手の反応が薄いと自然とトーンダウンしていきます。本来引き出せたはずの提案が出てこなくなり、サイトの改善も止まる。

PCスキルが高いことと、Webの仕事に意欲があることは、別問題です。窓口役の適性はスキルではなく、興味と意欲にあります。

真面目で何でも引き受けてしまう

二つ目のパターンは、社内で「真面目で頼りになる」と評判の社員を選んだケースです。一見、最適な人選に見えます。責任感が強く、仕事を投げ出さず、丁寧に対応する。社長としては安心して任せられそうです。

ただ、こうした人ほど潰れやすいのも事実です。本業の合間にWeb業務を押し込まれても「やります」と引き受けてしまい、断れない。社長から見ると問題なく回っているように見えるので、業務量の調整が後回しになります。

半年から1年経つと、本人の中に静かな疲弊が溜まります。表面的には淡々とこなしているように見えても、徐々にWebの話題を避けるようになる、新しい提案に対して消極的になる、最終的には「やはり自分には向いていないので外してください」と申し出る、あるいは退職を選ぶ。

この失敗の根本原因は、本人の能力や姿勢ではなく、業務量を調整しなかった社長の側にあります。窓口役を選ぶときは、本人の適性と同じくらい「本業との両立が現実的に可能か」を見る必要があります。

人や会社へのリスペクトがない

三つ目は、性格的な特性に関わる話です。表面的にはスキルが高く、論理的で、一見頼れそうに見える人でも、他者へのリスペクトが欠けているタイプは、窓口役には向きません。

具体的には、外注の提案を「大したことない」と決めつける、現場の苦労を「自分には関係ない」と切り捨てる、他社の取り組みを「うちより遅れている」と評価する。こうした姿勢の人は、技術的なスキルがあっても、外部パートナーから本気の提案を引き出せません。

外部の専門家は、相手の姿勢を敏感に察します。自分の専門性を尊重してくれる相手には惜しまず知見を出しますが、軽く扱われていると感じた瞬間に、必要最低限の対応に切り替えます。これは外注側の意地悪ではなく、人間として当たり前の反応です。

私自身、外部のWebパートナーとして関わる中で、窓口役の方の姿勢ひとつで、提案の深さが変わる経験を何度もしています。技術的な専門性以前に、相手をリスペクトできるかどうか。これは窓口役の前提条件です。

機能する窓口役を見極める5つの軸

FIVE CRITERIA FOR THE RIGHT PERSON

機能する窓口役を見極める5つの軸

1

自社の理念や事業を、自分の言葉で語れる

社長の言葉をそのまま借りず、現場の言葉に翻訳して外部に伝えられるか

2

現場の感覚を持っている

製造現場で何が起きているか把握できる立ち位置にいるか

3

社長と心理的に近い

「これはおかしい」と社長に言える関係性があるか

4

他者へのリスペクトがある

外注・現場・他社の取り組みに敬意を持って接せられるか

5

学ぶ姿勢がある

知らないことを認められるか。質問することに抵抗がないか

ここからは、逆に「機能している窓口役」の共通点を整理します。私が顧問先や交流会で見てきたケースに共通しているのは、ある一文に集約されます。

自社の理念をしっかり理解した上で、現場の感覚も熟知していて、決裁権のある人と近しい人。

この一文を5つの軸に分解すると、次のようになります。

①自社の理念や事業の方向性を、自分の言葉で語れる

窓口役は、外部のパートナーに対して「うちの会社は何のために何をやっているのか」を説明する場面が頻繁にあります。このとき、社長の言葉をそのまま借りるのではなく、自分の言葉に翻訳して伝えられるかが大事です。

理念を自分の言葉で語れる人は、Webサイトのコピーや構成を考えるときも、軸がぶれません。「社長はこう言っていますが、現場の感覚で言うとこういうことです」という補足ができる。これは外部パートナーにとって、極めて有り難い情報源です。

②現場の感覚を持っている

製造業の中小企業では、Webサイトに載せるべき情報の多くが現場にあります。製品の特徴、加工の工夫、品質管理のこだわり、お客様からのよくある質問。これらを知っているのは、現場で日々動いている人です。

窓口役は必ずしも現場の作業者である必要はありませんが、現場で何が起きているかを把握できる立ち位置にいることが大切です。営業事務でも品質管理でも、現場と頻繁にコミュニケーションが取れているなら、この軸を満たします。

③社長と心理的に近い

窓口役は、しばしば経営判断に近い場面に立ち会います。サイトの方向性、投資の優先順位、外部パートナーの選定。こうした判断は、社長に確認しないと進みません。

物理的な距離(同じフロアにいる、よく顔を合わせる)も大事ですが、それ以上に重要なのが心理的な距離です。社長に対して「これはおかしいと思います」と言える関係性、雑談ベースで相談できる空気感。これがないと、窓口役は判断を保留し続け、プロジェクトが停滞します。

④他者へのリスペクトを持っている

失敗パターンの三つ目の裏返しです。外部パートナー、自社の現場、他社の取り組み。これらすべてに対して、敬意を持って接せられるかどうか。

リスペクトのある窓口役と仕事をすると、外部パートナーは本気で動きます。「この人のために、できる限りの提案をしたい」と思える相手かどうかは、技術的な話題に入る前の数分の会話で伝わります。

⑤学ぶ姿勢がある

Webの世界は変化が早く、5年前の常識が今は通用しないことも珍しくありません。窓口役には、その都度学び直す姿勢が求められます。

ここで大事なのは、すでに知識があることではなく、「知らないことを認められる」「質問することに抵抗がない」という姿勢です。新しい情報に対して開かれている人は、外部パートナーからの提案も素直に受け止め、判断のスピードも上がります。逆に、自分の知識の範囲で物事を判断しようとする人は、Webの変化に追いつけません。


ここまで5つの軸を挙げました。傾向として、これらに当てはまる人は、品質管理・営業事務・現場リーダー・後継者候補といった「現場と経営を行き来する立ち位置」にいることが多い印象です。ただし繰り返しになりますが、部署で決めずに、必ず軸で見てください。同じ部署にも適性のある人とない人がいます。

窓口役を支える社長の役割

ここで、窓口役を選んだあとの話に少しだけ踏み込みます。

適性のある人を選んでも、それだけで安心はできません。窓口役は構造的に板挟みになる立場だからです。

私は前職で、外部の研究機関や設備メーカーとのプロジェクトに窓口役として関わっていた時期があります。そのとき、社内の幹部から無茶な要望が降ってきたり、現場の理解のない発言で振り回されたりすることが日常的にありました。そしてその皺寄せは、外部パートナーへの無理難題として伝わっていきます。前職は規模の大きな会社でしたが、この板挟み構造そのものは、企業の規模に関係なく発生します。むしろ中小企業のほうが、社長と窓口役の距離が近いぶん、影響が直接的に出やすいかもしれません。

窓口役が機能し続けるためには、社長が「窓口役の盾」になる場面が必要です。具体的には次のような場面で、社長の姿勢が問われます。

窓口役が「これは難しい」と言ったときに、無理に押し通さない

窓口役は外部とのやり取りの中で、現実的な制約を最も早く察知する立場にいます。「この納期では品質が落ちます」「この予算では希望されている機能は実装できません」といった申し出があったときに、社長が「とにかくやれ」と押し通すと、窓口役は次第に発言しなくなります。

外注からの提案を「現場が分かってない」と切り捨てない

外部パートナーの提案が、自社の現場感覚と合わないこともあります。ただ、それを頭ごなしに否定すると、外注は遠慮して提案を出さなくなります。窓口役が「現場としては難しいが、こういう工夫をすれば実現できそうです」と橋渡しする余地を、社長が残してあげる必要があります。

窓口役の業務時間を確保する

本業との兼務で窓口役を立てる以上、本業の業務量を調整しないとすぐに破綻します。月に何時間をWeb業務に充てるか、本業のどの部分を他の社員に振るか。これを決めるのは社長の仕事です。

窓口役だけに任せず、社長自身も外注との会議に同席する

特にプロジェクトの初期や、大きな意思決定のタイミングでは、社長自身が外注との打ち合わせに出ることをお勧めします。窓口役だけが社外と接していると、情報が偏ったり、窓口役個人への依存度が上がりすぎたりします。

ここまで読んで「社内だけで支えるのは難しそうだ」と感じた方もいるかもしれません。実際、窓口役が孤立して動くと負担が大きく、続かないケースが多いです。月1回の定例会だけでもいいので、外部パートナーが定期的に伴走する形を取ると、窓口役の精神的負荷が大きく下がります。単発の制作依頼だけでなく、月額の顧問契約のような形を検討する価値は、ここにあります。

今週から始められる3つのこと

ここまで読んでいただいたら、自社のどの社員に声をかけるか、ぼんやりとイメージが浮かんでいるかもしれません。最後に、今週から始められる3つの小さなアクションを提案します。

社員リストを「適性軸」で見直す

人事の組織図を部署順に見るのではなく、「5つの軸に該当しそうか」という基準で見直してみてください。普段意識していない人が候補に上がることもあります。

特に、社歴は長くないけれど社内で信頼を集めている若手や、現場と事務を兼務している中堅社員には目を留めてください。部署の枠だけで見ていると、見落としやすい人材です。

候補に挙がった人と雑談ベースで話してみる

候補者が決まっても、いきなり辞令を出すのは避けたほうが無難です。まずは雑談の中で「Webのことを少し手伝ってもらえないか」と打診してみてください。

このとき確認したいのは、本人の興味と現在の業務量です。「面白そうですね」と素直に反応するか、「忙しくて難しい」と本音を漏らすか。一度の雑談で見えてくるものは多いです。本人が前向きでなければ、適性があっても機能しません。

外部パートナーに「窓口役の見立て」を相談してみる

社内の人選を、外部の視点から見てもらうのも有効です。外部パートナーは、複数の中小企業を見ている分、「こういうタイプは合う」「こういうタイプは続かない」というパターンを持っています。具体的な候補者の名前を出さなくても、「うちの規模感だとどんな人が向いているか」という抽象的な相談でも構いません。

地域の公的支援窓口(商工会議所など)でも、こうした相談に乗ってくれます。Web制作会社やフリーランスに相談する場合は、その事業者が中小製造業の現場感覚を理解しているかも併せて見てください。

まとめ

中小製造業のWeb窓口役を選ぶときに、部署や肩書き、PCスキルで判断すると失敗しやすいです。本当に見るべきは、本人の興味、業務上の余裕、他者へのリスペクト、学ぶ姿勢といった人としての姿勢です。

そして、適性のある人を選んだあとも、窓口役は板挟みになる立場です。社長が盾になって支える前提を持っておくこと。これが、Web窓口役という体制を中小製造業で機能させるための鍵だと、私は考えています。

「自社のこの社員が候補になりそうだが、適性があるか相談したい」「外部パートナーとして月1回の伴走から始めたい」といったご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。富士市・静岡で、社内体制から伴走できる外部パートナーをお探しの中小製造業の方には、私のような立場の存在が役に立つはずです。

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