Web制作会社選びで失敗するパターン|発注側・制作側両方を経験したから分かること
はじめに
「ホームページを作り直したいけど、前の制作会社で失敗したから今度は慎重に選びたい」
「見積もりを何社かもらったけど、価格も内容もバラバラで、どこを選べばいいか分からない」
こうした相談をよく受けます。
私は現在、静岡県富士市でWebエンジニア・デザイナーとして活動していますが、もともとは大手化学メーカーで7年間、研究開発の仕事をしていました。その間、社内システムの外注や開発機器の制御ソフトの発注にも関わった経験があります。
つまり、発注する側と制作する側、両方の立場を経験しているということです。
この記事では、その両方の視点から見てきた「Web制作会社選びで失敗するパターン」を具体的にお伝えします。これから制作会社を選ぶ方、過去に失敗した経験があって慎重になっている方の参考になれば幸いです。
この記事のまとめ
- ⚡Web制作の失敗は「コミュニケーション不全」「品質軽視」「契約トラブル」「会社消滅」の4パターンに分類できる
- ⚡発注側にも原因がある——目的が曖昧なまま発注すると、修正地獄に陥りやすい
- ⚡「初期費用0円」のサブスク契約は、トータルコストと解約条件を必ず確認すべき
- ⚡ドメインとサーバーの所有権は、契約前に必ず確認しておくべき最重要事項
- ⚡制作会社選びに迷ったら、「担当者との相性」と「レスポンスの速さ」を重視する
私が見てきた失敗パターン【実例】

パターン1
意図が伝わらず修正地獄 – 発注側の経験から
化学メーカー時代、ある部署で社内システムの外注プロジェクトがありました。私自身が担当したわけではありませんが、横で見ていて「大変そうだな」と思っていました。
何が起きていたかというと、発注側の意図がなかなか制作会社に伝わらない。できあがってきたものを見て「違う、そうじゃない」となり、修正を依頼する。でもまた意図とズレたものが返ってくる。その繰り返しです。
修正のたびに追加費用が発生し、当初の予算を大幅にオーバー。納期も遅れ、担当者は疲弊していました。
一方で、私自身が関わった開発機器の制御ソフトの外注は、まったく違う体験でした。この会社は最初のヒアリングがとにかく丁寧で、こちらが言語化できていない部分まで引き出してくれました。「こういうことですか?」「この場合はどうしますか?」と、具体的なシナリオで確認してくれたので、認識のズレがほとんど起きなかった。
同じ「外注」でも、制作会社によってこれだけ違うのかと実感した経験です。
パターン2
テンプレート丸出し、他社向けコードがそのまま – 制作側として見た現実
Web制作者として活動するようになってから、クライアントの既存サイトを引き継ぐことが何度かありました。
あるとき、リニューアル前のサイトのソースコードを確認したところ、明らかにテンプレートをそのまま使っている形跡がありました。カスタマイズもほとんどされておらず、「これで何十万円も払ったのか」と驚いたものです。
さらに別の案件では、HTMLのコメントアウト部分に別の会社名が残っていることもありました。つまり、他社向けに作ったサイトをコピーして、社名だけ変えて納品していたのでしょう。
クライアントにしてみれば、見た目はそれなりに整っているので気づかない。でも中身は使い回し。これで「オリジナルデザインです」と言われていたら、ちょっと納得いかないですよね。
パターン3
連絡がつかない、ドメインが人質に – 突然の音信不通
これは本当に困るケースです。
あるクライアントから「前の制作会社と連絡がつかなくなった」という相談を受けました。聞けば、制作会社が資金難で事業を縮小しており、担当者も退職してしまったとのこと。
問題は、ドメインとサーバーが制作会社名義になっていたことです。
サイトを移管するにも、ドメインの管理権限を移してもらう必要がある。でも連絡がつかない。結局、そのドメインは諦めて、新しいドメインでサイトを作り直すことになりました。
長年使ってきたドメインには、検索エンジンからの評価も蓄積されています。それを手放すのは、SEO的にも大きな損失です。
パターン4
「初期費用0円」の甘い罠 – 6年縛りサブスクの実態
「初期費用0円でホームページが作れます」
こういった広告を見たことがある方も多いと思います。初期費用がかからないのは魅力的に見えますよね。
でも、私が引き継いだあるクライアントの契約書を見て驚きました。月額5万円の7年契約だったのです。
計算すると、5万円×12ヶ月×7年=455万円です。
しかも、契約期間中の解約には高額な違約金が発生する。運用サポートといっても、実際にやってもらえるのは軽微な修正程度。大きな変更は別途見積もり。
初期費用を払って普通に制作を依頼した方が、トータルでは安かったはずです。
「初期費用0円」には必ず裏がある。契約期間とトータルコスト、解約条件は絶対に確認すべきポイントです。
なぜこうした失敗が起きるのか

発注側の問題:目的が曖昧なまま発注している
失敗するプロジェクトに共通しているのは、「何のためにホームページを作るのか」が曖昧なケースです。
「とりあえず古くなったからリニューアルしたい」 「競合がきれいなサイトを持っているから、うちも」 「名刺代わりにホームページがあればいい」
こうした曖昧な状態で発注すると、制作会社も「何を作ればいいのか」が分からない。結果として、制作会社の提案をそのまま受け入れることになり、できあがってから「思っていたのと違う」となるわけです。
また、契約書をきちんと読んでいないケースも多い。ドメインの所有権、解約条件、追加費用の発生条件など、重要な項目が書かれているのに、「難しそうだから」とスルーしてしまう。
制作側の問題:価格競争と体制不足
一方で、制作会社側にも問題があります。
Web制作業界は参入障壁が低く、競争が激しい。価格競争に巻き込まれると、1案件あたりにかけられる時間と労力が減ります。結果として、テンプレートの使い回しや、ヒアリング不足のまま制作を進めることになる。
また、小規模な制作会社だと、担当者が退職したら引き継ぎがうまくいかない、会社の財務基盤が弱くて突然連絡がつかなくなる、といったリスクもあります。
安さだけで選ぶと、こうしたリスクを抱え込むことになりかねません。
失敗を避けるためのチェックポイント
では、どうすれば失敗を避けられるのか。私が考える重要なポイントを挙げます。
1. 契約前に必ず確認すべきこと
ドメインとサーバーの所有権
これが最重要です。ドメインとサーバーは誰の名義になるのか、契約前に必ず確認してください。
理想は自社名義で取得すること。制作会社に代行してもらう場合でも、最終的な所有権は自社にあることを契約書に明記してもらいましょう。
解約条件と違約金
サブスク型の契約の場合、解約時の条件を必ず確認してください。「○年以内の解約は残り期間分の費用を一括請求」といった条項がないか、しっかり読み込みましょう。
追加費用の発生条件
「修正は○回まで無料、それ以上は別途費用」といった条件は、事前に把握しておくべきです。曖昧なまま進めると、後から「聞いていない」となりがちです。
2. 見積もりの見方
複数社から見積もりを取ったとき、金額だけで比較しないことが大切です。
見積もりに含まれている項目を確認してください。
- デザインは何ページ分か
- スマホ対応は含まれているか
- お問い合わせフォームは含まれているか
- 公開後の修正対応はどこまで含まれているか
- SEO対策は含まれているか、どの程度か
同じ「ホームページ制作 50万円」でも、含まれている範囲は会社によって全く違います。安い見積もりが、実は必要なものが含まれていないだけ、というケースは珍しくありません。
3. 担当者との相性を見極める
最終的には、担当者との相性が重要です。
初回の打ち合わせで、以下の点をチェックしてみてください。
- こちらの話をきちんと聞いてくれるか
- 専門用語を分かりやすく説明してくれるか
- 質問に対するレスポンスが早いか
- 「できない」ことも正直に言ってくれるか
化学メーカー時代にお世話になった外注先は、まさにこうした点が優れていました。こちらが言語化できていない部分まで引き出してくれる。「こういうことですか?」と具体例を出して確認してくれる。
逆に、こちらの話を聞かずに自社のサービスを売り込んでくる会社は要注意です。発注者の目的よりも、自分たちが作りたいものを優先する傾向があります。
4. 実績・事例の確認ポイント
制作会社のWebサイトには、実績や事例が掲載されていることが多いです。ただし、見た目がきれいかどうかだけで判断しないことが大切です。
とはいえ、正直に言うと、これは制作者側の私自身も耳が痛い部分です。実績ページにはまだまだ改善の余地があります。
ただ、だからこそ発注者の立場で見たときに、以下のような点を意識している会社は信頼できると感じます。
- 自社と同じ業種・規模の実績があるか
- 「きれいに作りました」だけでなく、その後どうなったかに触れているか
- クライアントの声が具体的か(「満足しています」だけでなく、何が良かったのか)
完璧な実績ページを持っている会社は少ないかもしれません。でも、「成果を出すことを意識しているか」は、打ち合わせの会話からも伝わってきます。実績ページだけでなく、担当者との対話も含めて判断してみてください。
まとめ
Web制作会社選びで失敗するパターンは、大きく4つに分類できます。
- コミュニケーション不全型:意図が伝わらず修正繰り返し
- 品質軽視型:テンプレート使い回し、他社コード流用
- 契約トラブル型:ドメイン人質、高額な解約違約金
- 会社消滅型:連絡つかない、担当者退職で引き継ぎなし
これらを避けるためには、発注する側も「何のためにホームページを作るのか」を明確にし、契約書をきちんと読み、複数社を比較検討することが大切です。
そして何より、担当者との相性を重視してください。長く付き合っていくパートナーになる可能性があるわけですから、コミュニケーションが取りやすいかどうかは非常に重要です。
私自身、発注側と制作側の両方を経験したからこそ、双方の気持ちが分かるつもりです。「前の制作会社で嫌な思いをした」「どこに頼めばいいか分からない」という方は、お気軽にこちらからご相談ください。