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その契約書、サインして大丈夫?ホームページ制作で実際にあったトラブルと確認すべきポイント

はじめに

ホームページ制作を外注するとき、見積もり金額やデザインの方向性は入念に確認する方がほとんどです。ところが契約書となると、「専門用語が多くてよく分からないけど、まあ大丈夫だろう」と流し読みで済ませてしまうケースが少なくありません。

私はWeb制作の仕事をしていますが、既存のホームページに関する相談を受ける中で、契約書の確認不足が原因のトラブルに何度も出会ってきました。しかもそのほとんどが、「契約前にこの部分だけ見ていれば防げた」というものです。

この記事では、私が実際に相談を受けたトラブル事例を紹介した上で、契約前に最低限チェックしておくべきポイントを「絶対に確認すべき項目」と「できれば確認しておきたい項目」の2段階に分けて解説します。

この記事のまとめ

  • ホームページ制作の契約書は、見積もりやデザイン以上にトラブルの原因になりやすい
  • 7年縛り、ドメインの人質化、違約金など、契約書の確認不足が招く実際の被害は深刻
  • 「絶対に確認すべきポイント」5項目と「できれば確認しておきたいポイント」4項目を紹介
  • 契約書は確認・質問・納得のステップを経てから署名するもの

契約書を軽視するとどうなるか

まずは、実際にあったトラブルの事例を4つ紹介します。いずれも契約書をしっかり読んでいれば防げたものばかりです。

CONTRACT TROUBLE CASES

契約書の確認不足で起きた
4つのトラブル事例

01

7年縛りで総額420万円

安い月額に釣られて契約。契約期間の縛りが7年間で、途中解約も実質不可能だった。

被害:約420万円の支払い義務
02

ドメインの人質化

ドメイン名義が制作会社のまま契約。乗り換え時に引き継げず、ドメインパワーを喪失。

被害:SEOの積み上げがゼロに
03

中途解約で違約金請求

サービスに不満があり解約を申し出たところ、契約書に基づき違約金を請求された。

被害:想定外の違約金支払い
04

甲乙の責任が逆転

損害賠償条項で発注者と制作会社の責任の所在が文脈的に入れ替わっていた。

被害:本来負わない責任を背負うリスク

月額の安さに釣られて7年縛り、トータル455万円

ある企業の方から、「ホームページの保守運用を任せている制作会社が何もしてくれない」という相談を受けたことがあります。月額費用は一見すると手頃だったそうですが、契約書を確認させてもらったところ、契約期間は7年間。途中解約の条項も実質的に機能しない内容で、トータルの支払額は約455万円に達する計算でした。

以前の記事でもこの事例に触れましたが、月額が安く見えても総額で考えると相場を大きく上回ることがあります。契約期間の長さと総額は、必ずセットで確認してください。

ドメインの所有者が制作会社になっていた

ホームページのリニューアルにあたって制作会社を変えようとしたところ、ドメインの名義が前の制作会社になっていることが発覚したケースもあります。交渉はうまくいかず、結局そのドメインを手放すことになりました。

ドメインは長く使い続けるほど検索エンジンからの評価(ドメインパワー)が蓄積されていきます。それを失うということは、これまでのSEOの積み上げがゼロに戻るということです。名刺や印刷物に載せたURLも変更が必要になり、影響は想像以上に広範囲に及びます。

中途解約で違約金を請求された

制作会社のサービス内容に不満があり、契約期間の途中で解約を申し出たところ、違約金を請求されたという相談もありました。契約書の解約条項に違約金の規定が書かれていたものの、契約時には説明を受けておらず、本人も認識していなかったとのことです。

「説明がなかった」は気持ちとして理解できます。しかし、署名・捺印した以上は契約内容に同意したとみなされるのが現実です。

損害賠償の責任が逆転していた

これは少し特殊な事例ですが、契約書の損害賠償条項を読んでいたときに、甲(発注者)と乙(制作会社)の責任の所在が文脈的に入れ替わっているのを見つけたことがあります。ミスなのか意図的なのかは分かりません。ただ、もしそのまま契約を締結していたら、本来は制作会社が負うべき責任を発注者側が背負う形になっていた可能性があります。

契約書は最後まで、一文ずつ読む必要があるということを痛感した事例でした。

絶対に確認すべきポイント

ここからは、契約書の中でも特にトラブルに直結しやすい5つの項目を解説します。

契約期間と自動更新の条件

まず確認すべきは契約期間です。1年なのか3年なのか、あるいは先ほどの事例のように7年なのか。加えて、契約期間満了後に自動更新される条項が入っていないかも見てください。自動更新がある場合は、更新を止めるための通知期限(例:満了の3ヶ月前まで)が設定されていることが多いです。この期限を過ぎると、自動的にもう1年延長されてしまいます。

解約条件と違約金

中途解約ができるのかどうか。できる場合の条件は何か。違約金が発生するなら、その金額はいくらか。ここを確認しないまま契約すると、「辞めたいのに辞められない」状態になるリスクがあります。特に長期契約の場合、解約条件は必ず確認してください。

ドメイン・サーバーの所有権

ドメインとサーバーを誰の名義で取得・契約するかは、非常に重要です。制作会社名義になっている場合、契約終了後に引き渡してもらえるかどうかを事前に確認してください。理想は自社名義での取得です。すでに制作会社名義で運用されている場合でも、契約書の中で「契約終了時に発注者へ移管する」旨が明記されているかを確認しましょう。

納品物の権利(著作権・所有権)

完成したホームページのデザインやソースコードの著作権が、発注者と制作会社のどちらに帰属するかも確認が必要です。著作権が制作会社に残る契約の場合、将来的に他の制作会社へ乗り換える際にソースコードを使えない、デザインを流用できないといった制約が出てくる可能性があります。

損害賠償・免責の範囲

何か問題が起きたとき、どちらがどこまで責任を負うのか。制作会社側の責任上限が設定されているか。先ほどの甲乙逆転の事例もあるように、この条項は慎重に読む必要があります。特に「甲」「乙」の表記が多い条文では、どちらがどちらを指しているのか、冒頭の定義に立ち返りながら一文ずつ確認してください。

できれば確認しておきたいポイント

続いて、必須とまでは言えないものの、確認しておくと安心な4つの項目です。

業務範囲と追加費用の扱い

「保守運用」と一口に言っても、何が含まれるかは制作会社によって大きく異なります。月1回の更新作業が含まれるのか、セキュリティアップデートは対象か、修正回数に上限はあるのか。ここが曖昧なまま契約すると、「これは保守の範囲外なので追加費用がかかります」と後から言われるトラブルにつながります。

再委託(下請け)の可否

制作会社が作業の一部または全部を外部に再委託できるかどうかを定める条項です。「この会社だから依頼した」のに、実際の制作は全く別の会社が行っていたというケースは珍しくありません。再委託を認める場合でも、事前に通知・承認が必要かどうかを確認しておくと安心です。

検収条件と契約不適合責任

納品後に不具合が見つかった場合の対応範囲と期間を定める条項です。検収期間が短すぎると、しばらく使ってから気づいた不具合に対応してもらえない可能性があります。「納品後○日以内に申し出がなければ検収完了とみなす」という条項がある場合は、その期間が現実的かどうかを確認してください。

秘密保持(NDA)

ホームページ制作の過程では、自社の経営情報や顧客データ、製品情報などを制作会社と共有する場面があります。製造業の場合は技術情報や取引先の情報を渡すこともあるでしょう。それらの情報がどう管理され、契約終了後にどう扱われるのか。秘密保持に関する条項が含まれているか確認しておいてください。

WEB CONTRACT CHECKLIST

ホームページ制作
契約書の確認ポイント

必須

絶対に確認すべき5項目

契約期間と自動更新

何年縛りか?自動更新の有無と通知期限は?

解約条件と違約金

中途解約は可能か?違約金の金額と条件は?

ドメイン・サーバーの所有権

誰の名義か?契約終了後に移管できるか?

納品物の権利(著作権)

デザイン・ソースコードの著作権はどちらに帰属?

損害賠償・免責の範囲

甲乙の責任範囲は明確か?上限の設定は?


推奨

できれば確認しておきたい4項目

業務範囲と追加費用

保守に何が含まれるか?追加費用の発生条件は?

再委託(下請け)の可否

制作を外部に丸投げされないか?事前承認は必要?

検収条件と契約不適合責任

不具合対応の期間と範囲は?検収期間は現実的か?

秘密保持(NDA)

自社情報の管理方法は?契約終了後の扱いは?

契約書を確認するときの心構え

最後に、チェックポイントとは別に、契約書を読むときの姿勢についてお伝えしておきます。

まず、分からない条項があったら必ず質問してください。「こんなことを聞いたら失礼かも」と思う方もいるかもしれませんが、契約内容をきちんと理解した上で署名することは当然の権利です。むしろ、質問を嫌がるような制作会社であれば、その時点で取引先として信頼できるか再考した方がいいかもしれません。

「みんなこの内容で契約してますよ」という説明も、鵜呑みにしないでください。仮にそれが事実だったとしても、他社の判断と自社の判断は別です。

電子契約が普及したことで、契約書の送付から署名までのスピードが格段に上がりました。それ自体は便利なことですが、「本日中にご確認・ご署名をお願いします」と求められるケースも増えています。私自身、そういった場面を何度も見てきました。契約書は一度サインしたら簡単には撤回できません。内容を十分に読む時間がないと感じたら、「確認に数日いただきたい」と伝えてください。それを断る制作会社であれば、その対応自体がひとつの判断材料になります。

そもそも契約書は、送られてきた内容にそのままサインするものではありません。私が化学メーカーで働いていた頃は、担当者が内容を確認し、法務や関連部署のチェックを経て、必要があれば修正案を先方に提示して、すり合わせが終わってから初めて締結という流れが当たり前でした。中小企業や個人事業主の場合、ここまでの体制を整えるのは難しいかもしれません。それでも、「内容を確認する」「疑問点を質問する」「納得してから署名する」という最低限のステップは省かないでください。

自分だけでは判断がつかない場合は、第三者に相談するのも有効です。Webに詳しい知人や、別のWeb関係者に見てもらうだけでも気づけることは増えます。なお、契約条項の法的な有効性や解釈については弁護士への相談をおすすめします。この記事はあくまで「発注者として最低限ここを見ましょう」という実務上の視点でまとめたもので、法的なアドバイスではない点をご了承ください。

まとめ

ホームページ制作の契約書は、見積もりやデザインと比べると地味で後回しにされがちです。しかし、確認を怠ったときに起きるトラブルの影響は、金額面でも事業面でも決して小さくありません。

厳しい言い方になりますが、契約書にサインした以上、「知らなかった」「説明を受けていなかった」は通用しない場面がほとんどです。逆に言えば、契約前にこの記事で紹介したポイントを確認するだけで、多くのトラブルは未然に防げます。

ホームページ制作の外注を検討されている方は、制作会社の選び方依頼の仕方とあわせて、ぜひ契約書の確認も発注前のステップに加えてください。

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