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化学メーカーで叩き込まれた「品質管理」の考え方が、Web制作・開発にそのまま活きている話

はじめに

「品質管理」と聞くと、工場や製造現場をイメージする方が多いと思います。

私は大手化学メーカーで7年間、研究開発の仕事をしていました。化学プラントや研究所では、品質管理は空気のように当たり前のもの。実験の記録の残し方、手順書の作り方、機器の校正。すべてに「正しいやり方」があり、それを守ることが求められました。

現在はWebエンジニア・デザイナーとして活動していますが、この化学メーカー時代に叩き込まれた品質管理の考え方が、Web制作やシステム開発の現場でもそのまま活きていると感じています。

業界は違っても、「良い仕事」を支える本質は同じ。今回は、私が化学メーカーで学んだことと、それをWeb制作にどう応用しているかをお伝えします。

この記事のまとめ

  • 化学メーカーでは「再現性」と「誰が見ても分かる記録」が徹底的に求められる
  • 実験ノートのフォーマット作成、手順書の更新、分析機器の校正など、地道な品質管理が当たり前だった
  • これらの習慣は、Web制作・システム開発のドキュメント整備、バージョン管理、納品マニュアル作成にそのまま活きている
  • 「派手さはないけど、後から困らない仕事」が私のスタイル
  • 製造業出身だからこそ、品質管理の重要性を肌で知っている

化学メーカーで叩き込まれた4つの習慣

化学 x WEB:品質管理施工の転換マップ
※ Nano Banana Pro にて生成

1. 実験ノート:「後から誰が見ても分かる」が絶対条件

私が研究開発の仕事で最も意識していたのは、再現性です。

自分が行った実験を、別の人が同じ条件で再現できなければ、その研究には価値がない。だから、実験ノートには「後から誰が見ても、同じ実験ができるように」記録することを徹底していました。

具体的に意識していたのは以下の点です。

フォーマットを入念に作成する

実験の系統ごとに、記録すべき項目をあらかじめ決めてフォーマット化していました。「何を記録するか」をその都度考えていると、記載漏れが起きる。だから最初にフォーマットを作り込んで、それに沿って記録していく。

実験ナンバーで成果物とリンクさせる

実験の方法と、そこから得られたサンプルや分析データが、後から紐づけられるように実験ナンバーを定義していました。「このサンプル、どの実験で作ったんだっけ?」と迷うことがないように。

些細な気づきも漏らさず記載する

「いつもより少し温度が高かった」「途中で色が変わった」。こうした些細な変化も、後から重要な手がかりになることがあります。だから、気づいたことはすべて記録する習慣がつきました。

2. 手順書:属人化を防ぐための徹底

化学メーカーでは、作業手順書の作成と更新が当たり前でした。

理由はシンプルで、いつ人事異動があっても業務が回るようにするためです。

「この作業は○○さんしかできない」という状態は、組織にとってリスクでしかない。だから、誰がやっても同じ結果が出るように手順を文書化し、定期的に更新する。

私も自分の担当業務について、新規作成や更新作業を徹底していました。新しい分析方法を導入したら、すぐに手順書を作成する。既存の手順に変更があれば、すぐに更新する。

正直、面倒な作業です。でも、これをやっておかないと、自分が異動したときに後任が困る。あるいは、自分が長期休暇を取ったときに誰もカバーできない。

「自分がいなくても回る状態を作る」という意識は、この頃に身につきました。

3. 分析機器の校正:トレーサビリティと定期メンテナンス

化学分析では、測定データの信頼性が何より重要です。

そのためには、分析機器が正しく動作していることを定期的に確認する必要があります。これが校正です。

私がいた会社は、トレーサビリティのある標準物質を製造できる環境がありました。つまり、「この標準物質は、国際的な基準に紐づいている」と証明できるものを社内で持っていた。これを使って、分析機器が正しい値を出しているかを確認していました。

ポイントは、機器ごとに校正の頻度と手法を明確化していたことです。

すべての機器を同じ頻度で校正するのは非効率。経時変化が起きやすい機器は頻繁に、安定している機器は間隔を空けて。それぞれの特性に応じて、最適な校正スケジュールを決めていました。

「決めたルールを守る」だけでなく、「なぜそのルールなのか」を理解して運用する。これも品質管理の基本です。

4. 不具合対応:勘や経験に頼らず、ナレッジとして残す

研究開発の現場では、想定通りにいかないことの方が多い。実験が失敗する、機器がエラーを出す、データがおかしい。日常茶飯事です。

こうした不具合が起きたとき、「なぜなぜ分析」などの手法で原因を追及します。ここまでは多くの会社でやっていることだと思います。

私が意識していたのは、その結果を勘や経験だけに留めず、ナレッジとして残すことでした。

「こういうエラーが出たときは、ここを確認すると直ることが多い」 「この条件で実験すると、こういう問題が起きやすい」

こうした知見を文書化して、社内で共有する。後輩が同じ問題にぶつかったときに、ゼロから悩まなくて済むように。

地味な作業ですが、これが組織の財産になっていく。そういう感覚がありました。

Web制作・システム開発でどう活きているか

化学メーカーを離れてWeb業界に入ったとき、最初は「まったく違う世界だ」と思いました。

でも、実際に仕事をしてみると、品質管理の考え方はそのまま使えることに気づきました。

ドキュメント整備:仕様書とマニュアルのテンプレート化

Web制作でもシステム開発でも、「後から誰が見ても分かる」ドキュメントは重要です。

私は案件ごとに、仕様書や納品マニュアルをテンプレート化しています。実験ノートのフォーマットを作っていたときと同じ発想です。

  • サイトの構成はどうなっているか
  • どのページにどんな機能があるか
  • 更新作業はどう行うか
  • 緊急時の連絡先はどこか

これらを毎回ゼロから書くのではなく、テンプレートに沿って埋めていく。記載漏れを防ぎ、品質を一定に保つための工夫です。

バージョン管理:ファイル命名規則とGit・GitHubの活用

化学時代の「実験ナンバーで成果物をリンクさせる」習慣は、Web制作・システム開発のバージョン管理にそのまま活きています。

ファイル名には日付やバージョン番号を入れる。コードの変更履歴はGitで管理し、GitHubでリポジトリを運用しています。コミットメッセージは「何を、なぜ変更したか」が分かるように書く。

「このファイル、いつ誰が更新したんだっけ?」と迷うことがないように。化学時代に「このサンプル、どの実験で作ったんだっけ?」と迷わないようにしていたのと、まったく同じです。

変更履歴の記録:些細な変更も残す

Webサイトやシステムは、公開・リリース後も修正や更新が続きます。

「ここの文言を変えてほしい」「画像を差し替えてほしい」。クライアントからの依頼に対応するたびに、私は変更履歴を記録しています。

  • いつ
  • 誰の依頼で
  • どこを
  • どう変更したか

些細な変更でも記録する。実験ノートに「些細な気づきも漏らさず記載する」習慣が、ここでも活きています。

この記録があると、後から「あのとき何を変えたんだっけ?」と確認できる。トラブルが起きたときの原因追及にも役立ちます。

納品マニュアル:属人化を防ぐ

Webサイトやシステムの納品時には、案件の規模や内容に応じて、クライアント向けの操作マニュアルを作成するようにしています。

「更新作業はこうやる」「画像のサイズはこの大きさで」「困ったときはここを確認」。こうした情報をまとめて渡す。

手順書を作っていた頃の意識そのままです。私がいなくても、クライアントが自分で対応できる状態を作る。

もちろん、すべての案件で詳細なマニュアルを用意できるわけではありません。価格帯や案件の性質によって、どこまで整備するかは変わります。ただ、「属人化を防ぐ」という発想自体は、どんな案件でも意識しています。将来的に別の制作会社に引き継ぐことになっても、困らないように。

定期メンテナンス:サイト保守の明確化

Webサイトも、公開したら終わりではありません。

  • WordPressやプラグインのアップデート
  • セキュリティパッチの適用
  • SSL証明書の更新
  • バックアップの確認

これらを「問題が起きてから対応する」のではなく、定期的にチェックする。分析機器の校正スケジュールを決めていたのと同じ発想です。

サイトごとに、何を、どの頻度で確認するかを明確にしておく。これが長期的な品質維持につながります。

エラー対応の記録:再発防止のために

Web制作でもシステム開発でも、予期せぬエラーやトラブルは起きます。

そのとき、ただ直して終わりにするのではなく、何が原因で、どう対処したかを記録しています。

「この環境でこのプラグインを使うと、こういうエラーが出ることがある」 「このブラウザでは、この書き方だと表示が崩れる」

こうした知見を蓄積しておくと、次に同じような案件があったときに役立ちます。協業パートナーと一緒に仕事をするときにも共有できる。

不具合対応をナレッジとして残す習慣は、化学時代からずっと続けています。

共通する本質:「誰が見ても分かる」「再現性」

属人化 vs 組織的品質
※ Nano Banana Pro にて生成

化学メーカーでの品質管理と、Web制作・システム開発での品質管理。

業界は違いますが、根っこにある考え方は同じだと感じています。

「誰が見ても分かる」

自分だけが分かる記録、自分だけができる作業は、品質管理の観点からはリスクです。後から別の人が見ても理解できる、別の人が同じ作業をしても同じ結果が出る。そういう状態を作ることが、品質を支える基盤になる。

「再現性」

同じ手順を踏めば、同じ結果が得られる。これは科学の基本であり、良い仕事の基本でもあります。属人的なセンスや勘に頼るのではなく、仕組みとして品質を担保する。

正直なところ、こうした地道な作業は派手さがありません。「ドキュメントを整備しています」「変更履歴を記録しています」と言っても、目に見えるインパクトはない。

でも、こういう地道な積み重ねが、後から困らない仕事につながると信じています。

納品して終わりではなく、その後も長く使ってもらえるサイトを作る。担当者が変わっても、制作会社が変わっても、困らないように引き継げる状態を作る。

これが、私が考える「品質」です。

まとめ

化学メーカーで7年間叩き込まれた品質管理の考え方は、Web制作・システム開発の現場でもそのまま活きています。

  • 実験ノートのフォーマット作成 → 仕様書・マニュアルのテンプレート化
  • 実験ナンバーで成果物をリンク → ファイル命名規則、バージョン管理
  • 些細な変化も記録 → 変更履歴の記録
  • 手順書の整備 → 納品マニュアルの作成
  • 分析機器の定期校正 → サイトの定期メンテナンス
  • 不具合のナレッジ化 → エラー対応の記録と再発防止

業界は変わりましたが、「誰が見ても分かる」「再現性」という軸はブレていません。

派手さはないけれど、地道な積み重ねで品質を支える。それが、製造業出身の私がWeb制作・システム開発で大切にしていることです。

「ちゃんとした仕事をしてくれる人に頼みたい」 「納品後も長く使えるサイトやシステムを作ってほしい」

そうお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。製造業の現場感覚が分かるパートナーとして、品質にこだわったWeb制作・開発をお手伝いします。

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