製造業のDX、何から始める?最初の一歩はWebから
はじめに
「DXを進めようと言われたけど、何から手をつければいいか分からない」
製造業の経営者やWeb担当の方から、このような声をよく聞きます。ニュースや業界誌ではDXの成功事例が紹介されていますが、数億円規模のシステム導入や、専門チームを組んだ大企業の話ばかり。「うちみたいな規模には関係ない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
私は大手化学メーカーで研究開発に従事した後、Web業界に転身しました。製造現場の実情も、デジタル化の難しさも、両方を経験しています。この記事では、地方の中小製造業の方に向けて、現実的なDXの第一歩を解説します。
この記事のまとめ
- ⚡中小製造業のDX、約3割は「取組む予定なし」。まず現状を知ることから
- ⚡DXの本質は大規模システム導入ではない。顧客接点のデジタル化も立派なDX
- ⚡最初の一歩は「Webの整備」。ホームページや問い合わせ導線の見直しから
- ⚡いきなり全部変えようとすると失敗する。段階的に進めることが成功の鍵
- ⚡静岡県のDX取組率は全国平均以下。地方こそ「小さく始める」発想が重要
中小製造業のDX、実態はどうなっている?
まず、中小企業のDXがどこまで進んでいるのか、データを見てみましょう。
中小企業基盤整備機構の調査(2024年)によると、DXに「既に取り組んでいる」「取組みを検討している」と回答した中小企業は42.0%。前年から10ポイント以上増えており、関心は確実に高まっています。
一方で、「取組む予定はない」と回答した企業も30.9%存在します。約3割の企業は、DXの必要性を感じていない、あるいは感じていても動けていない状況です。
課題として最も多いのは「IT人材が足りない」(25.4%)、「DX推進人材が足りない」(24.8%)。人材不足がDXの壁になっている現状が浮かび上がります。
私の拠点である静岡県のデータも紹介します。帝国データバンクの調査によると、静岡県内でDXに取り組んでいる企業は12.5%。全国平均の15.7%を下回っています。地方の製造業ほど、「何から始めればいいか分からない」という声が多いのが実情です。
そもそもDXとは何か?

DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)という言葉が一人歩きしている感があります。改めて整理しておきましょう。
DXとは、デジタル技術を活用して、業務プロセスや顧客体験、ビジネスモデルを変革することです。ポイントは「変革」という部分。単にアナログをデジタルに置き換えるだけでなく、それによって新しい価値を生み出すことがDXの本質です。
デジタル化には3つの段階があります。
デジタイゼーションは、紙の書類をPDFにする、手書きの日報をExcelにするなど、アナログ情報をデジタル化する段階です。デジタライゼーションは、個別の業務プロセスをデジタル技術で効率化する段階。そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化そのものを変革する段階です。
先ほどの調査によると、DXに取り組んでいる企業のうち、35.7%はまだデジタイゼーションの段階にあります。つまり、多くの中小企業は「アナログからデジタルへの移行」を進めている途中であり、いきなり大規模なDXを目指す必要はありません。
DXの前に考えるべきこと
DXを進める前に、立ち止まって考えてほしいことがあります。それは「何のためにDXをするのか」という目的の明確化です。
製造業の現場でよく見かけるのが、経営層と現場の認識ギャップです。経営層は「業界のトレンドだから」「競合がやっているから」とDXを推進しようとする。しかし現場は「今のやり方で回っているのに、なぜ変える必要があるのか」と感じている。この溝を埋めないまま新しいシステムを導入しても、うまくいきません。
私が化学メーカーで働いていた頃、まさにこの問題を経験しました。ある現場で新しいシステムを導入したのですが、稼働してから「レガシーシステムにしかできない機能がある」ことが判明したのです。結果として、新しいシステムと古いシステムを両方運用する羽目になりました。現場の負担は増え、当初期待していた効率化は実現できませんでした。
この経験から学んだのは、「いきなり全部を変えようとしない」ということ。既存の業務フローを十分に理解し、段階的に移行することが大切です。
最初の一歩は「顧客接点のデジタル化」

では、DXの第一歩として何から始めればいいのか。私がおすすめするのは「顧客接点のデジタル化」、つまりWeb周りの整備です。
「え、Webの話?工場のIoTとか、生産管理システムの話じゃないの?」と思われるかもしれません。もちろん、それらも重要なDXの取り組みです。しかし、中小製造業が最初に手をつけるなら、顧客接点から始める方が現実的です。
理由は3つあります。
1つ目は、成果が見えやすいこと。 ホームページのアクセス数、問い合わせ件数、資料請求数など、効果を数字で測定できます。社内で「DXの成果」を説明しやすく、次の投資への理解を得やすくなります。
2つ目は、投資額が比較的小さいこと。 生産管理システムや工場のIoT化には数百万〜数千万円の投資が必要になることもあります。一方、ホームページの改善や問い合わせ導線の整備は、数十万円から始められます。
3つ目は、顧客に直接価値を届けられること。 社内の効率化も大切ですが、最終的に売上につながるのは顧客との接点です。ホームページで自社の強みを「顧客の課題解決」として発信できれば、問い合わせ増加や新規顧客獲得に直結します。
具体的に何をすればいいか。まずは自社のホームページを見直してみてください。情報が古くなっていないか。問い合わせフォームは使いやすいか。自社の技術が「誰のどんな課題を解決できるか」が伝わる内容になっているか。これらを改善するだけでも、立派なDXの第一歩です。
DXで成果を出すために
DXで成果を出すポイントは、段階的に進めることです。小さな成功体験を積み重ねることで、社内の理解が広がり、より大きな取り組みへとつながっていきます。
私が化学メーカーで働いていた頃、成功したDXの事例も経験しています。製造工場のバルブ開度調整をIoT化したプロジェクトです。
それまでバルブの開度調整は、熟練の職人さんが経験と勘で行っていました。この工程をセンサーとデータ分析で自動化したところ、製造コストが削減され、より安全に運転できるようになりました。
このプロジェクトが成功した理由は、いきなり工場全体をデジタル化しようとしなかったことです。まず1つの工程に絞って実証し、成果を確認してから横展開していきました。
DXは一気に進めるものではありません。「小さく始めて、成果を確認しながら広げていく」。この姿勢が、特にリソースの限られた中小企業には重要です。
まとめ
製造業のDXは、大規模なシステム投資だけではありません。
地方の中小製造業こそ、「小さく始める」発想が大切です。まずはホームページの見直し、問い合わせ導線の整備、自社の強みの発信といったWeb周りの整備から始めてみてください。それも立派なDXの第一歩です。
いきなり全部を変えようとせず、段階的に進めること。小さな成功体験を積み重ねて、社内の理解を広げていくこと。そうすれば、次のステップとして生産管理や工場のIoT化といった、より大きな取り組みにもつながっていきます。
私は大手化学メーカーで「発注する側」の視点を、Web業界で「制作する側」の視点を経験してきました。製造業の現場感覚を理解しながら、Web活用をサポートできるのが強みです。
「DXの第一歩として、まずホームページを見直したい」「Webを活用して問い合わせを増やしたい」といったご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。